
ロボットハンドとは?種類・選び方とロボットアームとの組み合わせ
産業用ロボットや協働ロボットの導入では、可搬重量やリーチなど、ロボットアームの性能に目が向きがちです。しかし、実際にワークへ触れ、つかむ・吸着する・持ち上げる作業を担うのは「ロボットハンド」です。
ロボットハンドがワークに合っていなければ、搬送中の落下や位置ずれ、傷・変形、タクトタイムの悪化につながります。ロボットによる自動化を成功させるには、先にロボットアームを決めるのではなく、「何を、どのように扱いたいか」を起点に、ハンドとアームを一体で選定することが重要です。
本記事では、ロボットハンドの種類と用途、選び方、ロボットアームとの組み合わせ方を解説します。
ロボットハンドとは
ロボットハンドとは、産業用ロボットや協働ロボットのアーム先端に取り付け、ワークをつかむ、吸着する、持ち上げるといった作業を行う機器です。人にたとえると、ロボットアームが「腕」、ロボットハンドが「手」にあたります。
ロボットの先端に取り付ける機器の総称は「エンドエフェクタ」です。エンドエフェクタには、ロボットハンドのほか、ねじ締め工具、溶接トーチ、研磨工具なども含まれます。
「グリッパー」は、主に爪や指でワークをつかむタイプのロボットハンドを指します。
ロボットアームだけでなくハンドが重要な理由
ロボットアームは、決められた範囲内でハンドを移動させます。一方、ワークを安定して保持できるか、傷をつけずに扱えるか、正確な位置に置けるかは、ロボットハンドの方式や設計によって大きく変わります。
例えば、薄い板材は側面を爪でつかみにくいため、上面から保持できる吸着型が適しています。反対に、表面に穴や大きな凹凸があるワークは真空を保ちにくく、把持型が適する場合があります。
ロボットハンドはロボットアームの付属品ではありません。
ワークと作業条件に応じて、アームと同時に検討すべき重要な構成要素です。
ロボットハンドの主な種類
把持型
「把持型(はじがた)」と読み、「把持(はじ)」とは物をつかんで保持することをいいます。
ロボットハンドの把持型は爪を開閉してワークを挟む方式で、グリッパーやチャックとも呼ばれます。
形状が一定の機械部品や円筒部品、正確な位置決めが必要な組立・加工機への投入に適しています。
駆動方式には空圧式と電動式があります。電動式は把持力や開閉位置を調整しやすく、多品種のワークにも対応しやすい点が特徴です。ただし、把持力が強すぎるとワークを傷つけ、弱すぎると落下につながります。
吸着型
真空圧によって吸着パッドをワーク表面に密着させる方式です。
板材、ガラス、フィルム、段ボールなど、薄くて面積の広いワークに適しています。
一方、穴や凹凸、通気性がある素材、油や粉じんが付着した表面では、安定して吸着できないことがあります。重量だけでなく、材質や表面状態も確認が必要です。
マグネット型
磁力を利用して、鋼板や鉄製部品などを保持する方式です。
爪を差し込む空間がないワークや、複雑な形状の鉄系部品にも対応しやすい点が特徴です。
ただし、アルミニウムや銅、一部のステンレスなどの非磁性体には使用できません。停電時の保持方法や、ワークへの磁気の影響も確認します。
ソフト型
ゴムや樹脂などの柔らかい指で、ワークを包み込むように保持する方式です。
食品、袋、不定形品、傷つきやすい製品に適しています。
形状差のあるワークへ柔軟に対応できますが、重量、搬送速度、位置決め精度によっては使用できない場合があります。実際のワークを使った確認が重要です。
ワークからロボットハンドとロボットアームを選ぶ
ロボットハンドを選ぶ際は、ハンド単体の性能だけでなく、取り付けるロボットアームとの組み合わせを考える必要があります。
自動化設備を検討する際は、最初に「どのロボットを導入するか」を決めるのではなく、「どのようなワークに、どのような作業をさせたいか」を整理することが重要です。
- 自動化したい作業
- ワークの形状、大きさ、重量
- 材質、硬さ、表面状態
- 必要な位置決め精度
- 搬送距離とタクトタイム
- 設置スペースと使用環境
- 品種切り替えの有無
まず、これらの条件から把持型や吸着型などの方式を絞り込みます。
例えば、同じ搬送作業でも、扱うワークによって適したロボットハンドは異なります。
- 金属部品を正確な位置に置きたい場合は把持型
- 薄い板材や段ボールを上面から持ち上げたい場合は吸着型
- 鉄製の重量物を扱う場合はマグネット型
- 食品や袋物など、傷つきやすい不定形品を扱う場合はソフト型
次に、ワークとハンドを合わせた総重量、重心、必要なリーチ、動作速度を踏まえてロボットアームを選びます。
重量だけでアームを選ぶのは不十分です。ロボットハンドを取り付けることで先端が重くなり、重心も変わります。
画像認識や力覚センサ、ツールチェンジャーなどが必要な場合は、周辺機器まで含めてシステム全体を検討します。
異なるメーカーのロボットハンドとロボットアームは組み合わせられる?
ロボットハンドとロボットアームは、必ずしも同じメーカーでそろえる必要はありません。取付部分の寸法が適合すれば、異なるメーカーの製品を組み合わせることも可能です。
ロボットアーム先端とエンドエフェクタを接続する機械的インターフェースについては、国際規格のISO 9409-1:2004で、円形取付プレートの主要寸法や表示方法などが定められています。
こうした規格に対応した製品であれば、アダプタープレートなどを介して、異なるメーカーのロボットアームとハンドを取り付けられる場合があります。
ただし、ISO 9409-1が定めているのは主に機械的な取付部分です。物理的に取り付けられても、そのまま使用できるとは限りません。
次のような項目についても、組み合わせごとに確認が必要です。
- ロボットの可搬重量とハンドを含めた総重量
- 先端の重心位置や許容モーメント
- 電源や空気圧の供給方法
- 配線、I/O、通信方式
- 制御ソフトや設定機能への対応
- アダプタープレートや中継機器の要否
また、組み合わせによっては、ロボットハンドが備える一部の機能を利用できない場合もあります。
そのため、特定メーカーの製品だけを前提とせず、複数メーカーのロボットアーム、ハンド、周辺機器を比較し、ワークと作業条件に適したシステムを選定することが重要です。
ロボットアーム・ロボットハンド導入前には実際のワークでテストする
カタログ上の把持力や可搬重量だけでは、実際にワークを安定して扱えるか判断できないことがあります。同じ重量でも、形状、重心、摩擦、油分、個体差によって保持状態が変わるためです。
ロボットハンド導入前には、実際のワークを使い、次の点を確認します。
- 搬送中に落下や位置ずれが起こらないか
- ワークに傷や変形が生じないか
- 正しい位置へ置けるか
- 必要なタクトタイムを満たせるか
- 品種切り替えや復旧を行いやすいか
ロボットハンドの選定・ワークテストは山善へ
「自社のワークに適したロボットハンドが分からない」「どのロボットアームと組み合わせればよいか判断できない」「導入前に実機で動作を確かめたい」とお悩みの方は、山善TFS支社にご相談ください。
山善では、複数メーカーのロボットアーム、ロボットハンド、画像認識機器などを取り扱っています。特定メーカーの製品を前提とせず、ワークの形状や重量、作業内容、設置環境を踏まえて、システム全体をご提案します。
新大阪のロボットテストラボでは、実際のワークを使った把持・吸着テストや操作体験に対応しています。
3Dプリンタでテスト用のハンド爪やワーク置台を製作し、動作を検証することも可能です。導入後のミスマッチを防ぐためにも、まずは実機によるワークテストをご活用ください。
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