技術コラム棚卸し自動化を実現するシステム6選
+選定手順を解説

棚卸しとはシステム上の在庫、あるいは帳簿上の在庫と現物を突き合わせる非常に重要な作業です。現物に合わせてシステムや帳簿を修正することもあるため、棚卸しで間違いがあると、先々まで影響を及ぼします。
しかし、棚卸しを人手に頼ってやっていると、どうしてもミスが発生してしまうものです。そこで、棚卸しを自動化するためのシステムを紹介します。

棚卸し自動化を実現するシステムを6つ紹介

棚卸し自動化を実現するシステムを6つ紹介

1. RFID技術

RFIDとはRadio Frequency Identificationのことであり、電波を使って商品タグに記録された情報を読み取るものです。RFIDの特徴として、リーダーとタグが一定範囲離れていても読み取れることや、リーダーとタグの間に障害物があっても読み取れることが挙げられます。
これにより、チェック漏れを少なくでき、棚卸しの精度を上げられるのです。
※無線技術の為、事前の現場環境テストが必須となります。

2. バーコードスキャナーとモバイルデバイス

RFIDと似たものにバーコードがあります。スキャナで商品についたバーコードを読み取ることでも同様に棚卸しができます。近年ではスマートフォンのカメラとソフトを利用して、スキャナと同じ機能を持たせることも可能になりました。
ただし、これらはRFIDとは異なり、スキャナーやスマートフォンを持ってバーコードの20cm以内に行く必要があり、RFIDに比べて作業者の手間は増えます。

3. ドローンによる在庫確認

倉庫では限られた面積のなかで商品を保管するため、商品が高く積み上げられたり、背の高いラックで管理されていたりすることもあります。このような場所にある商品を確認するために作業者が高所に登るのは危険であり、また、効率の悪い作業となります。
そこで有効なのが、ドローンによる在庫確認です。人は地上で操縦すればよいため、安全に効率よく在庫管理ができるのです。

4. AMRによる在庫確認

AMRとはAutonomous Mobile Robotのことであり、本質的にはAGV(Auto Guided Vehicle)と同じものです。ただし、AGVは走行時に磁気テープや二次元コードなどの誘導が必要なのに対して、AMRはセンサーにより自らの位置と目的地を検知するため、誘導が必要ありません。

AMRをRFIDと組み合わせることで、広大な倉庫での棚卸しを効率よく行えるようになります。さらにドローンと組み合わせることで、高所の棚卸しもできます。

5. AI(人工知能)と機械学習

スマートフォンなどで撮影した商品をAIに画像として認識させることにより、棚卸しを効率化できます。AIが商品を認識する方法として、あらかじめマスタを登録するものと、画像を与えて機械学習によって商品を覚えさせるものがあります。

6. 在庫管理システム

商品(在庫)を管理するシステムとしてWMS(Warehouse Management System)がありますが、このシステムでは倉庫内の商品しか管理できません。しかし、物理的には他社のヤードなどに置いていても、所有権は自社にある、つまり自社の在庫として管理すべき商品があります。そのような商品を管理し、棚卸しするときには、在庫管理システムが必要になるのです。

棚卸し自動化システムの選定手順

棚卸し自動化システムの選定手順

1. 現状の課題と目標の設定

棚卸しシステムを導入するときには、システム化の目的、つまり解決すべき課題を把握する必要があります。棚卸しの課題としては、次のようなものがあります。

  • 帳簿上の在庫と実際の在庫が合わない
  • 棚卸しに時間がかかる
  • 棚卸しのために普段より人員が多く必要
  • 入荷時にバーコードやICタグが貼付されていない

たとえば、帳簿と実在庫が合わない原因としては、人によるピッキングミスが考えられます。また、棚卸しに時間がかかるのは、商品の位置が管理できていなかったり、倉庫が広かったりして、人の移動に時間がかかることが挙げられます。
このように問題の原因を検討することで、システム化の目的を明確にでき、目標を設定できます。たとえば、帳簿と実在庫の誤差を◯%以下にする、作業時間を◯時間以内にする、あるいは棚卸しにかかる人員を◯人以下にするなどの目標を立てる場合があります。

2. 予算の設定

システムを導入するには、一定規模の予算が必要になります。会社の経営状況や想定される需要予測、つまりビジネスチャンスを踏まえて、どの程度までなら設備投資できるか検討しましょう。

そのうえで、システム化した際のコストが、予算に収まるよう検討する必要があります。システム開発費や社員のトレーニング費用など導入コストだけでなく、定期的なメンテナンスやシステムアップグレードなどランニングコストを計算する必要があります。
償却費と損益分岐点を計算して、どの程度で回収できるのか見極めることも重要です。

3. 各システムの調査

前述の通り、棚卸しを自動化するためのシステムはいろいろあります。ピッキングミスをなくしたいならRFIDやバーコード、広大な倉庫での棚卸しを効率化したいならドローンやAMRがあります。

現状の課題を解決してくれるのはどのシステムなのか、十分に検討しましょう。同業他社など選考して導入している企業があれば、見学させてもらったりヒアリングしたりすることも有効です。

4. ベンダーの選定

RFPとはRequest for Proposalのことであり、システムを新規構築、あるいはリプレイスするときに必要な提案依頼です。これまでに検討した現状の課題やシステム化の目的、採用したいシステムの概要などをまとめたものがRFPです。これを元にベンダーと協議することになるため、煩雑でも必ず作成するようにしましょう。

ベンダーを選定する際には、考慮するべき項目がいくつかあります。

  • 自社・他社での導入実績
  • 導入コスト・ランニングコスト
  • 導入前後のサポート体制
  • 現場作業の捉え方(自社との相性)

導入実績やコストは基本的なことです。提示されたものをむやみに信じるのではなく、妥当性の調査・検討を自社でも行う必要があります。また、導入前後のサポート体制もよく確認しましょう。導入前は実機を用いた現場でのデモをしてくれるのか、導入後は運用サポートやメンテナンスをどの程度してくれるのかなどが大切です。

そして、ベンダーが自社の現場作業をどのように捉えるかも大切です。システム化しようとすると、既存の現場作業と調整が必要な場面もあります。システムを開発する立場からすると、現場作業を変更すれば楽に開発が進められます。しかし、それでは現場にとって使いづらいシステムとなり、システム化に残る作業との兼ね合いによっては、トータルで現状より効率が悪くなるかもしれません。

既存の作業の意義や必要性をきちんと理解してくれ、その上で慎重にシステム開発を進めてくれるベンダーを選ぶとよいでしょう。

5. 実装計画の策定

システムの仕様が決まったら、それを現場にどのように実装するのか計画を立てる必要があります。倉庫全体を一度に進めるのか部分的に進めるのか、部分的に進めるならどのような優先順位で進めるのか決める必要があるのです。
ただし、段階的に導入して評価しながら徐々に切り替えていくほうが、リスクが小さくなる傾向にあります。

また、システムを使う社員のトレーニングも必要です。社員はシステムについて何も知らない状態から習得するため、できる限り丁寧にサポートしてもらえるよう、かつ社員が確実に習得できるよう計画を立てましょう。

6. 継続的な評価と改善

社員がシステムを管理できるようになり本格的に稼働しても、システム導入は終わりではありません。使っているなかで新たな課題が発生することもあるため、現場の情報をキャッチアップし改善することが必要です。ベンダーと密に連絡を取り、タイムリーに改善してもらいましょう。

また、操業の都合で一斉棚卸しができない倉庫では、循環棚卸しを実施している倉庫もあるでしょう。循環棚卸しは部分的に操業(商品の入出庫)を止めながら順番に棚卸しを行うものです。一斉棚卸しだけでなく、循環棚卸しでもシステムが効果を発揮しているか確認しましょう。

一番大切なのは、システム化によって目的や目標を達成することです。帳簿と実在庫の誤差、作業時間、作業人数などが目標に達しているかどうか定量的に確認しましょう。これにより、投資効果の検証ができるようになります。

棚卸し自動化システムの導入は山善へ

山善では、棚卸しの悩みを抱えている企業様をサポートしています。棚卸しを効率化し、同時に帳簿と実在庫の誤差を減らしたいと考えている経営者の方は、一度お気軽にご相談ください。