技術コラムダブルトランザクションの導入手順と
最新テクノロジーを紹介

近年、インターネット通販の事業規模拡大により、個人向け小口荷物の取り扱いが増えているといわれています。小口荷物の倉庫では少量多品種の商品を扱うため、管理方法が複雑になる傾向にあります。

この記事では、倉庫内における商品管理手法の一つであるダブルトランザクションについて解説します。

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ダブルトランザクションとは

ダブルトランザクションの説明の前に、元になっているシンプルな二つの商品管理手法を説明します。

  • 固定ロケーション:棚の区画に対して置く商品を「決めて」管理する手法
  • フリーロケーション:棚の区画に対して置く商品を「決めずに」管理する手法

固定ロケーションでは商品を置く棚が決まっているためピッキングしやすいメリットがある反面、在庫量に関わらず商品の種類の数だけ棚が必要になるデメリットがあります。一方、フリーロケーションでは商品を置く棚を適宜決められるため、効率よく保管できるメリットがある反面、適宜商品を置く棚を決めるため管理が複雑になるデメリットがあります。

ダブルトランザクションは、両者のメリットを併せ持つ手法です。この手法ではストックエリアとピッキングエリアに分け、あらかじめ出荷頻度の高い商品をピッキングエリアに移動させておきます。そして、ピッキングエリアの在庫量が一定以下となった時点で、再びストックエリアからピッキングエリアに商品を移動させるのです。

ピッキングエリアでは固定ロケーションを採用するため、ピッキングする商品の位置を把握しやすくなっています。一方、ストックエリアではフリーロケーションで管理するため、効率の良い保管が可能となります。

出荷頻度の差によって二つのエリアと管理手法を採用し、それぞれのメリットを活かして運用するのがダブルトランザクションの特徴です。ただし、なかにはピッキングエリアもフリーロケーションで運用される場合もあります。

ダブルトランザクションの導入手順

ダブルトランザクションの導入手順

現状分析と目標設定

ダブルトランザクションに向いている倉庫とそうでない倉庫があります。まずは、自社の倉庫がダブルトランザクションに向いているのかどうかを確認しましょう。特徴は次の通りです。

  • 出荷(ピンキング)頻度の高い商品が多い
  • 商品を移動させやすい
  • 1オーダーあたりの商品数が少ない

上記に当てはまらない場合は、ダブルトランザクションを導入してもあまり多くのメリットを享受できないかもしれません。

また、ダブルトランザクションの導入を検討した経緯として、必ず現状の問題点があるでしょう。その問題点を数値化しておくことが重要です。例えば「ある商品のピッキングに◯時間かかっている」、「倉庫の所管面積(商品を保管できる面積)に対して◯◯%しか使えていない」というものです。

あらかじめ課題を数値化しておくことにより目標を設定しやすくなり、導入後に目標の達成度合いを評価しやすくなります。

エリアの設計

ダブルトランザクションでは、ストックエリアとピッキングエリアを分ける必要があります。分け方には二つの方法があり、倉庫に適した方法を選びましょう。

  • 縦配置:ストックエリアとピッキングエリアを上下で区切る。比較的狭い倉庫で有効
  • 横配置:ストックエリアとピッキングエリアをを左右で区切る。商品を移動させやすく、面積に余裕のある倉庫で有効

後から倉庫の面積を変えるのは非常に難しいものです。ダブルトランザクション導入に必要な面積を算出し、横配置ができない場合には縦配置を検討する必要があります。

システムの導入

ダブルトランザクションでは、ストックエリアでフリーロケーションを導入します。在庫量や抱えている商品に応じて適宜、商品を置く棚を決める必要があるため、後述するWMSなどのシステム導入が欠かせません。商品の種類や数量だけでなく、ロケーション管理も必要となりますので、必ず適したシステムを同時に導入しましょう。

在庫の整理と移動

ダブルトランザクションでは、ストックエリアからピッキングエリアへの商品移動が定常作業として発生します。そのため、滞留在庫となっている商品をストックエリアの奥の方に置いたり、賞味期限が切れているなど販売できない商品を廃棄したりして整理する必要があります。

ただし、商品のサイズや重量によっては後述の自動倉庫システムが必要になる場合もあります。

ピッキングプロセスの最適化

ピッキングプロセスの最適化も必要です。いつまでのオーダー分をいつピッキングエリアに移動させるか、あるいはピッキングエリアの在庫量がどの程度まで減ったら移動させるか検討する必要があります。他にも、ピッキング実施タイミングも検討する必要があり、ダブルトランザクションを前提としたピッキング作業全体の最適化が重要です。

ピッキングタイミングの一例として「出荷予定から逆算して都度ピッキング」や「曜日や時間を決めて定期的にピッキング」といった方法があります。

従業員トレーニング

新しくダブルトランザクションを導入する場合、従業員には変更した作業に慣れてもらう必要があります。そのため、従業員のトレーニングを実施しましょう。

ダブルトランザクションでは、固定ロケーションとフリーロケーション双方の作業があります。従業員がいずれか未経験の場合、それに慣れる必要があります。また、ストックエリアからピッキングエリアへの商品移動にも慣れる必要があるのです。

テスト運用と正式運用

トレーニングの次に必要なのがテスト運用です。倉庫内にテストエリアを設け、ストックエリアとピッキングエリアに分けたうえでテスト運用を行いましょう。テスト運用するなかで発生する問題の原因を考えることも重要です。

ある問題が発生したとき、それが「慣れていないために起こった問題」なのか「根本的な対策が必要な問題」なのかによって対応が変わってきます。テスト運用で明確になった問題を極力解決してから正式運用に移るようにしましょう。

継続的改善

テスト運用で明確になった問題を解決しても、正式な運用を進めるなかで新しい問題が見えてくるでしょう。テスト運用に参加できなかった従業員がいたり、テスト運用で扱わなかった商品があったりすると、当然新しい問題が発生します。その問題を一つひとつ改善していくことが、当初の目標を達成できるか否かにつながります。

継続的に改善するなかで、導入検討の際に設定した目標をクリアしているか評価していきましょう。

在庫管理システムと組み合わせて活用できるテクノロジー

在庫管理システムと組み合わせて活用できるテクノロジー

自動倉庫システム

自動倉庫システムとは、棚やラックから作業者が商品を受け取る場所まで自動で商品を搬送するシステムです。比較的大きな商品の場合はスタッカークレーン、小さな商品の場合は自走式台車などを使用します。

縦配置のダブルトランザクションにおいて、ストックエリア(上部)からピッキングエリア(下部)への商品の移動には手間や時間がかかります。また、作業中の商品落下など安全面や品質面のリスクもあります。自動倉庫システムを導入するとそのような問題を解決できるのです。

WMS

WMS(Warehouse Management System)は、倉庫に保管している商品の情報をシステム上で管理するシステムです。各々の商品について商品名や数量、ロットNo.や保管棚番号(ロケーション)など、さまざまな情報を持っています。食品の場合は賞味期限の情報も持っているため、賞味期限の近い商品から優先的に出荷指示を出すことで不良在庫化を防ぎます。

ウェアラブル端末

ウェアラブル端末とは、腕に取り付け可能なバーコードリーダーなどの端末のことをいいます。通常のバーコードリーダーでは手に持つ必要があるため片手を塞いでしまいます。そこで、常に両手を使えるようにするのがウェアラブル端末です。また、ウェアラブル端末とは広く体に装着可能な端末のことを指すため、バーコードリーダーに限りません。

AGVとAMR

AGV(Automated Guided Vehicle)とAMR(Autonomous Mobile Robot)は、いずれも倉庫内を自律走行できるもので、商品の搬送にも使用できます。後述のIoTやRFID技術を組み合わせることで、ストックエリアからピッキングエリアへの商品移動や、ピッキング作業そのものを自動化することも可能です。

両者の違いは自律走行の方式です。AGVは磁気テープや二次元コードを倉庫側に取り付けて誘導する必要があるのに対して、AMRは目的地と現在地を取得して完全自律走行ができます。動線が複雑な倉庫など、走行経路上に従業員の方がいたり仮置きの商品があったりする場合は、AMRの方が向いています。

IoTセンサーとRFID技術

IoT(Internet of Things)とは、「もの」同士がインターネットによってシステム的につながることをいいます。倉庫におけるIoTに役立つツールの一つがRFID(Radio Frequency Identification)技術です。

RFIDとは、商品に取り付けられたRFIDタグを専用のリーダーで読み取るもので、本質的にはバーコードと同じです。しかし、バーコードと違って電波を使用するため、タグとリーダーが一定以上離れていても読み取れたり、間に障害物があっても読み取れたりします。AVGやAMRとRFIDを組み合わせることにより、ストックエリアからピッキングエリアへの商品移動やピッキング作業そのものを自動化することも可能です。

ダブルトランザクション導入のご相談は山善へ

山善ではロケーション管理に課題を抱え、ダブルトランザクションの導入を検討している企業様をサポートしています。倉庫の効率的な運用や少量多品種ピッキングの対策など、解決したい課題をまずはお気軽にご相談ください。

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