技術コラムクロスドッキング方式により
倉庫の保管在庫を最適化する方法

倉庫は商品を保管する場所、という考えは半分正解で半分不正解です。確かに、現在でも保管を目的とした倉庫は数多くあります。一方で昨今、ECなど多品種小ロットの小口配送が増え、翌日配送などリードタイムの短縮の短縮が求められています。保管しないことで在庫の最適化、あるいは物流の効率化を求めるのがクロスドッキング方式です。

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クロスドッキング方式とは

クロスドッキング方式とは

通常、倉庫に商品を入庫して検品した後、保管エリアに移動させて保管します。そして、出荷指示が出たら、ピッキングエリアにてピッキングを行った後、集荷します。しかし、これでは必ず保管を前提とすることになり、保管業務やそれに付随するコストがかかり、リードタイムも長くなるのが問題です。

倉庫である以上、入荷と出荷は必要です。しかし、保管業務については再考の余地があります。そこで、保管業務をなくして、倉庫に商品がある時間を可能な限り短くすることを考えたのがクロスドッキング方式です。保管業務が必要となるのは、出荷指示が出ていないときです。そこで、あらかじめ出荷指示が出るとわかっている商品をタイムリーに入荷すれば、商品を保管する必要はありません。ただし、これを実現するには仕入先とシステム管理を伴う連携が必要になります。

クロスドッキング方式と似たものとして、通過型物流センター(TC = Transfer Center)があります。クロスドッキング方式はあくまでも保管業務を行う在庫型物流センター(DC = Distribution )の運用方法の話であり、そもそも保管業務を行わないTCとは似て非なるものです。

クロスドッキング方式の導入手順

現状分析と目標設定

クロスドッキング方式を導入するには、現状扱っている商品の数量やSKU、それに商品の流れを把握する必要があります。SKUとはStock Keeping Unitのことで、顧客にとっての商品の最小単位のことをいいます。例えば、商品Aが10個というオーダーならSKUが1、商品Aが5個と商品Bが20個というオーダーならSKUが2、という数え方です。

商品の流れについては、入荷から出荷までの期間はもちろんのこと、入荷前の工場、あるいは倉庫での生産・保管状況も把握したほうがよいでしょう。入荷前の工程が他社であった場合は、その会社の事情も考慮しないと、なかなかクロスドッキング方式に協力してもらえません。一方、入荷前の工程が自社の別倉庫であった場合は、生産〜配送までの流れ全体を把握しないと最適化できません。

そのうえで、目標設定することが大切です。もっともわかりやすい目標はコスト削減、あるいは売上(利益)アップでしょう。クロスドッキング方式の導入により保管費用が下がった、あるいはリードタイムを短縮して取扱件数が増えて、売上が上がったというものです。いずれも数値目標と目標達成時期を明確にして、クロスドッキング方式の導入によって達成すべきことを定量的に示しましょう。

適用範囲の決定

クロスドッキング方式の適用範囲を決めることも必要です。どのような商品でもクロスドッキング方式のメリットを得られるわけではありません。そもそも、商品を倉庫で保管するのは、その理由があるためです。例えば、大口の商品をいくつかまとめて輸送したほうが高効率の場合は、従来通り保管業務を行った方がメリットの大きい場合もあります。

どのような商品ならクロスドッキングのメリットが活かせるのか検討したうえで、戦略的に導入を進めましょう。

物流センターの設計・改修

クロスドッキングを行うといっても、在庫が完全にゼロになるわけではありません。従来通りの保管業務が必要になることもあれば、入庫してすぐに出庫するといっても一時保管が必要になることもあります。そのなかで、どの程度従来の保管エリアを狭くして、どの程度一時保管エリアやピッキングエリアを広くするか検討しなければなりません。両者のバランスを決めるのが商品の取扱量や適用範囲となります。当然、それに合わせた倉庫のレイアウト変更なども必要です。

ITシステムの導入・連携

クロスドッキングを行うためには、今後入荷する商品の情報を詳細に、かつ正確に把握する必要があります。その情報をもとにしてトラックの手配などを行うためです。しかし、これらの情報のやりとりを人同士で行っていては、言い間違いや聞き間違いが誤入荷・誤出荷の原因となり得ます。

精度が高く効率的なクロスドッキング方式を導入するためには、ITシステムの導入が必要不可欠になります。ITシステムを導入する際には、すでに開発されているものをカスタマイズして導入する場合と、依頼してゼロから構築する方法があります。当然前者のほうがコストは安いため、一旦前者で検討してから、どうしても対応できない場合のみ後者を検討するようにしましょう。

パートナーとの協力体制構築

クロスドッキング方式を導入するには前述の通り、前工程となる工場や倉庫との連携が欠かせません。前工程が自社の場合は比較的スムーズに決められるでしょう。しかし、前工程が荷主など別の会社、あるいはそもそも3PL事業者の場合はパートナーになる会社との協力体制構築が必要となります。

テスト運用と正式運用

クロスドッキング方式を導入すると、前工程となる工場や倉庫とのデータの共有、および入荷後の作業フローが大幅に変わります。必ずテスト運用をして問題点を明確にし、それを解決してから正式運用に移行するようにしましょう。

データ共有の部分で不備があると、自社のみならず広範囲に影響が及ぶ場合もあります。了承を得たうえで前工程の会社にもテスト運用に参加してもらい、正式運用後のトラブルをあらかじめなくすようにしましょう。

また、入荷後の倉庫内での作業フロー変更も、作業者にとって大きな負担になります。テスト運用前にはきちんと従業員教育を行い、クロスドッキング方式の必要性やメリット、詳細な運用方法などを可能な限り丁寧に説明しましょう。

クロスドッキングの運用を支援するためのITシステム

クロスドッキングの運用を支援するためのITシステム

WMS(倉庫管理システム)

WMS(Warehouse Management System)とは、倉庫内にある商品の情報を、商品一つひとつと結びつけて管理するシステムです。商品を保管するには商品名や商品コード、ロットNo.、それに入荷元や出荷先が必要であり、食品などは賞味期限の管理も必要です。これらをまとめて管理することで効率のよい入出荷を行えます。

輸送管理システム

クロスドッキング方式導入の目的の一つに、配送リードタイムの短縮があります。配送リードタイムを短縮するには倉庫から早く出荷することも大切ですが、効率よくトラックに積載し、効率のよいルートで配送先に向かう必要があります。効率的な積載方法や走行ルートを提案してくれるのが輸送管理システムです。

従来、このような業務はベテランの勘と経験によって行われていた側面があります。しかし、それをシステム化することで属人的でなくなり、どのような場面でも最適な方法を提示してくれるようになります。なかには進捗管理に対応したシステムもあり、配送の進捗状況やトラックの現在位置を管理できるものもあるのです。

バーコード/RFIDシステム

バーコードやRFID(Radio Frequency Identification)は、検品を省力化・効率化してくれるものです。商品にバーコードが付いている場合、スキャナで読み取ることで瞬時に検品でき、その情報はWMSと共有されます。RFIDも使用目的はバーコードと同様です。しかし、RFIDはタグに記録された商品情報を電波を使って読み取るため、バーコードとは異なり一定程度離れていても読み取れたり、複数のタグを一括で読み取れたりします。

RFIDのほうが高機能な分コストは高くなりますので、導入時には費用対効果をよく検討しましょう。

自動仕分けシステム

自動仕分けシステムとは、その名の通り、人の手を介さずに配送先別に商品を仕分けするシステムです。ソーターなどの設備を使用し、人に頼った仕分けを排除することで高精度かつ高効率な仕分けをサポートします。

クロスドッキング方式導入のご相談は山善へ

山善では在庫管理に課題を抱え、クロスドッキング方式の導入を検討している企業様をサポートしています。クロスドッキング方式導入における倉庫のレイアウト設計や、自社の倉庫に合ったITシステムの導入など、まずは解決したい課題をお気軽にご相談ください。

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