技術コラムAGV導入ガイド|
自社に最適な種類、誘導方式、価格帯の選び方

AGV(Automated Guided Vehicle=自動誘導車)とは、定められたルート上を自動で移動し、荷物の運搬などを行う設備のことをいいます。
工場内での運搬や工程間の横持ちなど、生産に直接関係ない運搬作業は人間の生産性を落とす原因の一つです。このような作業をAGVに行わせることにより、より重要な作業にリソースを割けるのです。

ただし、AGVにもさまざまな種類があり、どのように導入検討すればよいか悩むこともあるでしょう。
ここではAGV導入において必要な検討ポイントを紹介します。

AGV導入の流れ

AGV導入を検討するとき、一般的には次のような手順で検討するかもしれません。

  1. AGV導入を決める
  2. ユーザーがAGVメーカーに相談
  3. AGVメーカーが設備仕様を検討
  4. AGVメーカーが見積書作成
  5. ユーザーが発注/導入

しかし、AGVメーカーに相談する前に、ユーザーが実施すべき項目があります。

  • 成立性検討
  • 方式、設備仕様の決定
  • メーカー/SIer選定

AGV導入の流れ

はじめに「なぜAGVが必要なのか?」という点を明確にしておかねばなりません。AGVはあくまでも手段であり、AGVを導入することが目的ではないはずです。そのため、予算や効果、運用する環境や運搬物を踏まえて、本当にAGVが最適なのか検討する必要があります。

はじめからAGVメーカーに相談してしまうと「(自社の)AGVを用いて問題を解決する」というところから話が始まってしまいます。場合によってはAGVほど高度な設備が必要ない場合もありますが、当然ながらAGVメーカーは、そのような提案はしません。

次に「条件を満たす最適なAGVはどれか?」という点を明確にしておかねばなりません。「AGVが必要」という結論に至ったとしても、AGVは方式や仕様によりさまざまなタイプがあります。また、一つのメーカーですべてのタイプを網羅しているとは限りません。

一方、ユーザー側の環境(要求仕様)の都合で、そもそも適さないAGVなどもあります。AGVメーカーに相談する前に、ユーザー自身が誘導方式や移積方式、AGVのサイズなどを検討・確認し、要求仕様を明確にしておく必要があります。

最後に「要求仕様の条件を満たすメーカー/SIer」を明確にしておかねばなりません。メーカーごとにAGVのラインナップが異なるため、得意とする条件が異なります。メーカー選定の出発点はユーザーの要求仕様となるため、その仕様に合致するモデル、およびメーカーを3社程度選定します。

AGV導入の流れ

ここまでの準備をしてからメーカーに相談しないと、どのメーカーに相談すべきか判断がつきません。要求仕様という判断軸がないと、メーカーから説明を受けても、それが自社にとって必要な仕様なのか分からないでしょう。

以下に、ユーザーが確認しておくべき項目を列挙します。

  • 予算:費用対効果、導入目的、効果、導入時期など
  • 搬送物:重量、サイズ、形状など
  • 運用環境:走行路、外光、室温度、雰囲気、床耐荷重など
  • AGV条件:メーカー、誘導方式、移積方法など
  • 運用内容:搬送指示手段、上位システム連携、安全要求など

AGV導入のポイント

予算(導入価格)

AGVの本体価格は、導入費用全体の中でも一定の割合を占めます。しかし、本体価格と導入費用の合計にあまり差がないと考えるのは、現実的ではありません。

例えば、AGV一台の本体価格が300万円だとします。このとき、設備導入経験のある担当者なら、概算で「AGV本体価格が300万円と仮定すると、導入費用は全体でおおよそ500万円程度」と考えるかもしれません。しかし、要求仕様によって金額は大きく変わってきます。

例えば、以下のような条件でAGV導入費用を見積もります。

  • 作業内容:倉庫エリアから生産ラインエリアへの部品搬送(搬送ST指示は自動)生産ラインエリアから倉庫エリアに空箱を持ち帰る必要あり
  • 移載方式:STがコンベアとなっており、AGVの上にコンベアユニットを取り付けて受け取り/受け渡し
  • ST数:倉庫側2箇所(ST1、ST2)、生産ライン側2×2箇所(ST3〜4、ST5〜6)

上記内容で見積もると、AGVを一台導入するために必要な費用は1,150万円になります。内訳は表1のとおりです。

表1 自動運行システム付きのAVG導入費用

項目 金額(万円) 数量 金額(万円 )
AGV本体 300 1 300
ワーク受け渡し機構 AGV上物 100 1 100
各設備側 50 6 300
コントローラ/システム 走行指示システム 50 1 50
運行システム 300 1 300
設置費用 100 1 100
合計 1,150

※参考に金額を記載しております。実際は上下しますのでご注意下さい。

ワーク受け渡し機構とは、AGVにワークを乗せるためのコンベアや、受け渡し確認のセンサのことです。センサは各STにも必要なため、STの数と同数の受け渡し機構が必要となります。
走行指示システムとは、AGVがどのSTに行けばよいか指示するシステムです。それとは別に、ワークの現在位置やAGVの稼働状況、既存設備との連動などを管理するために運行システムが必要です。

これでは当初想定していた金額とは大幅に乖離します。

一方、次のような条件であれば、当初の概算見積もりに近い金額になります。

  • 作業内容:倉庫エリアから生産ラインエリアへの部品搬送(搬送ST指示は手動)生産ラインエリアから倉庫エリアに空箱を持ち帰る必要あり
  • 移載方式:倉庫側コンベア⇔AGV、AGV⇔生産ライン側コンベアの受け渡しは人が行う
  • ST数:倉庫側1箇所(ST1)、生産ライン側2箇所(ST2、ST3)
    ※一つのSTで受け取り/受け渡しを行う

はじめの案との違いは、AGVと既存設備のワークの受け渡しを人間が行うことです。これにより、見積もり金額は大幅に下がり450万円になります。この金額なら当初の概算金額に近いでしょう。

表2 自動運行システムなしのAVG導入費用

項目 金額(万円) 数量 金額(万円 )
AGV本体 300 1 300
ワーク受け渡し機構 AGV上物 0 0 0
各設備側 0 0 0
コントローラ/システム 走行指示システム 50 1 50
運行システム 0 0 0
設置費用 100 1 100
合計 450

※参考に金額を記載しております。実際は上下しますのでご注意下さい。

このように、「AGVの導入」と一口に言っても、その要求仕様により見積もり金額が大幅に変わってきます。

運用環境(必要な道幅)

AGVを運用するためには、最低限必要な通路幅があります。例えば、全幅800mmのAGVがあったとき、概算で1,000mm程度の通路幅があれば問題ないと考える方もいるかもしれません。
しかし、一般的にはAGV一台につき、2,000mm程度の通路幅が必要です。

内訳を次に示します。

  • 旋回エリア(直径):1,360mm AGVの全幅が800mm、全長が1,100mmとすると√(1,100²+800²)≒1,360mm
  • 直進時のバラツキや人とのすれ違い:合計600〜700mm

また、複数台のAGVを同時運行し、すれ違いがある場合にはさらにもう1台分の通路幅が必要になります。 ただし、これは通路の全区間において必要というわけではなく、周辺の環境にもよります。

AGVの種類と積載方法

一口にAGVと言っても、その種類や積載方法はさまざまです。ここでは五つの積載方法を紹介します。

一つ目は積載型です。

  • 積載方法:AGVの天板が平面になっており、そこにワーク(荷物)を載せるタイプ。
  • メリット:汎用性があり、幅広いワークに対応できる。
  • デメリット:ワークの積載設備(フォークリフトなど)が必要。荷崩れ防止措置が必要。

二つ目は低床型です。

  • 積載方法:ワークを載せたパレットやカゴテーナの下にAGVが潜り込むタイプ。
  • メリット:AGVの全高が低いため、高さ制限のある場所でも使用できる。
  • デメリット:潜り込むパレットやカゴテーナの脚と、AGVの干渉(センサの検知範囲など)に注意が必要。

三つ目は牽引型です。

  • 積載方法:ワークを載せた荷台やカゴテーナにAGVを連結し、前から引っ張る(牽引する)タイプ。
  • メリット:荷物の量や荷姿に対して柔軟に運用できる。
  • デメリット:連結したときの内輪差を考慮して通路の幅を確保する必要がある。後退は困難である。

四つ目は上物設置です。

  • 積載方法:AGVの上にコンベアなどのワーク受け渡し設備がついたタイプ。
  • メリット:生産ラインや搬送ラインから直接ワークを積載できる。
  • デメリット:受け渡し設備の電源や信号線が、AGVから取れる必要がある。ライン側、AGV側双方のセンサなどの干渉があると使用できない。

五つ目はAGFです。

  • 積載方法:フォークリフトをAGV化したタイプ。
  • メリット:一般的なAGVでは搬送できない重量物が搬送可能。
  • デメリット:一般的なAGVより高価、かつ広い通路の幅が必要。

種類(誘導方式)の選び方

AGVの誘導方式は大きく分けて三つあります。使用環境や予算、また同業他社での導入事例に合わせて、誘導方式を決めましょう。

一つ目は磁気(ライントレース)です。

  • システム概要:磁気テープを床に張り巡らせて、AGV側の磁気センサで読み取る。
  • メリット:安価で設置が容易。位置精度が±1cm程度と高い。歴史があり安定したシステムであるため、信用度が高い。
  • デメリット:複雑な制御には向かない。AGV自身がテープを踏まないルート設計しかできない。

二つ目はレーザー(SLAM)です。

  • システム概要:赤外線レーザーを用いて環境地図作成(周辺環境測定)を行い、その中で自己位置推定を行う。
  • メリット:床面にAGV誘導のための設置物が必要ない。
  • デメリット:赤外線レーザーを使うため、外光、蛍光灯、反射物などに弱い。磁気やQRに比べて精度が低い

三つ目はQR(グリッド)です。

  • システム概要:AGV本体床面にあるカメラで、建物の床に貼り付けられたQRを読み込んで進む。
  • メリット:QRの設置が容易。停止精度が高い(±1cm)
  • デメリット:QRが読み取れる程度の、高い平面度が床に要求される。直進(縦・横)が基本的な動作で、斜行や円弧を描く旋回ができない場合もある。

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