技術コラム粉体混合機のコンタミ対策
(異物混入・交差汚染の防止策)

食品工場や医薬品工場では粉末状の材料(粉体)を混ぜる工程があります。このとき、均一に混ぜることも重要ですが、異物を混入させないことがより重要です。本記事では、粉体混合機のコンタミ対策の方法と、コンタミの悩みを解決できる製品である「マルチ・コンテナミキサー」を紹介いたします。

粉体混合機におけるコンタミ対策とは

粉体複合機とは複数の粉体を混ぜ合わせるために使用する装置です。加工する(混ぜる)製品によって決められている粉体以外の「異物」のことをコンタミといいます。コンタミとはコンタミネーション(contamination)のことで、本来の言葉の意味は「汚染」ですが、広い意味で「異物」と捉えられています。

粉体混合機におけるコンタミ対策とは

食品や医薬品は、各材料の使用量が決められています。厳密に計量された粉体以外のものが混ざってしまうと、レシピ通りに製品を作れません。また、それだけでなく人体にとって有害なものが混入する恐れもあります。そのため、食品や医薬品のあらゆる工程でコンタミ対策が必要ですが、比較的工程の上流にある「粉体を混ぜる工程」でのコンタミ防止が重要視されているのです。

粉体混合機のコンタミ対策の方法

粉体混合機のコンタミ対策にはさまざまな方法があります。ハード対策だけでなく、すぐにできるソフト対策も紹介しますので、現在の工場の状態に当てはめて検討してください。

混合機本体の設計・選定による対策

粉体混合機を導入する際にまず考えなければならないのが、コンテナ内(粉体を投入する部分)のデッドスペースと洗浄性です。

粒子が小さければ小さいほど、コンテナのあらゆる部分に粉体が入り込みます。特に隅角部に入った粉体はなかなか取れず、他の粉体と混ざりづらい状況になります。また、粉体が溜まると洗浄して別の粉体を投入しても、前の粉体が混入する恐れがあります。そのため、隅角部がないコンテナ、あるいは隅角部に入った粉体も混ぜやすい構造の粉体混合機を選ぶ必要があります。また、粉体を無駄にせず完全に混ぜ合わせるという観点からも、コンテナ内のデッドスペースに気をつける必要があるのです。

とはいえ、溜まる粉体をゼロにするのは難しいもの。そのため、溜まった粉体を洗浄できることが大切です。洗浄しやすい内部形状や開口部があることはもちろん、場合によっては洗浄のために簡単に部品を取り外せることも重要です。粉体混合機の設計を依頼する場合や、既製品の粉体混合機を選定する場合には、洗浄性にも気をつけてください。

この際、撹拌機をコンテナ内に挿入して混ぜるのではなく、コンテナ自体を回転させて混ぜる混合機のことを「コンテナミキサー」と呼びます。

洗浄・メンテナンス面での対策

粉体混合機の設計・選定によるハード面の対策も重要ですが、洗浄やメンテナンスなどソフト面の対策も重要です。異なる組み合わせの粉体を投入するときはもちろん、同じ粉体の組み合わせで使う場合も定期的に洗浄するようにしましょう。

洗浄方法としては、CIPやSIPが挙げられます。 CIPとは「Cleaning in Place」のことで、粉体混合機を分解することなく機器内の自動洗浄ができるシステムのことです。あらかじめ洗浄システムが粉体混合機に取り付けられており、設置されているポンプで洗浄液をコンテナ内に送り込めるようになっています。簡単な操作のみで洗浄ができるため、複数台の粉体混合機があっても洗浄の負担を小さくできるのが特徴です。

一方SIPとは「Sterilization in Place」のことで、コンテナ内を滅菌するシステムのことをいいます。SIPにはさまざまな種類があり、加熱処理や薬品による化学的処理、それにフィルターでのろ過や放射線・紫外線などの照射があります。一般的なのは加熱処理で、例えば130℃程度の高温で約30分といったような条件 で加熱処理を行います。

これらの方法を利用してバリデーション、つまりコンタミ対策の方法を科学的根拠に従って決められるようになります。

原材料・周辺機器を活用した対策

シフター(篩(ふるい)機)はメッシュや振動、そして粒子の直径の違いを利用して粉体と異物を分ける装置です。また、磁性をもつ金属は磁選機で、空気中に浮遊する微粒子は集塵装置で選別・回収できます。これらは一度混ざってしまった異物を取り除くための、粉体混合機の周辺機器を利用したハード対策です。

また、混合する粉体の保管場所や搬送経路を工夫してコンタミ対策をする方法もあります。保管場所周辺の環境管理や容器の密閉性、搬送経路の環境管理と最短ルートとなるレイアウトの検討など、運用面におけるソフト対策も重要です。これらの対策は、一度レイアウトができあがった後に行うのは負担が大きいでしょう。しかし、場合によっては根本的な問題を解決できることもあるため、目先の都合だけでなく将来的なメリットも十分考慮する必要があります。

他にもソフト対策として挙げられるのがゾーニングです。これは作業環境を原材料の保管や下処理を行う「汚染作業区域」、加工や調理・加熱処理を行う「準清潔作業区域」、そして包装や殺菌・冷却を行う「清潔作業区域」に分けるものです。 それぞれの区域は隔壁などで物理的に区切られており、区域間を移動するときは作業着を替える、区域をまたいで設備や機器を共有しないなどの施策によりコンタミを防止します。

作業環境・オペレーション上の対策

コンタミ対策で重要なことの一つが標準手順(作業標準)の策定です。ハード対策やソフト対策をいくら施しても、肝心の人間(作業員)がそれらを遵守しなければ効果を発揮できません。そのためには、バリデーションによって有効であることが実証されているコンタミ対策方法を標準化して教育する必要があります。

一方で、万が一コンタミが発生した際の原因究明、および対策立案に役立つのがトレーサビリティです。製品が作られる過程でどのような工程をいつ、どのように実施したかを記録するもので、コンタミが発覚した時点からさかのぼって原因を追跡できます。 ただし、これらの記録は問題が起こらない限りあまり生産性のない作業なので、データの取得や管理は可能な限り自動化(システム化)することが望ましいでしょう。

作業標準の教育以外にも、衛生管理教育を行うことも重要です。特に食品や医薬品は人の体内に入るため、コンタミの種類によっては重大な問題を引き起こします。あるいは、昨今の厳しい消費者の視点においては、コンタミが発生した時点でその製品やメーカーは信用を落としてしまうものです。現場で働く人には各々の作業の重要性を再認識してもらい、コンタミが発生したときの問題の大きさや、コンタミを防ぐのは現場の人たち自身だということをよく考えてもらう必要があります。

コンタミ対策と粉体混合の作業効率化を実現できる「マルチ・コンテナミキサー」

コンタミ対策と粉体混合の作業効率化を実現できる「マルチ・コンテナミキサー」

万全なコンタミ対策を実施できるだけでなく、作業効率化にも寄与するのが「マルチ・コンテナミキサー」です。マルチ・コンテナミキサーには次のようなメリットがあります。

  • 簡単にコンテナの着脱が可能
  • コンタミ対策もバッチリ
  • 複数コンテナで稼働率向上

コンテナごと回転させるため、一見大がかりな装置にも思えますが、コンテナの着脱は非常に簡単です。コンテナは密閉されておりコンタミ対策が十分なだけでなく、開口部が大きく洗浄しやすいのが特徴です。さらに粉体の種類に合わせて複数のコンテナを用意すれば、混合、洗浄、投入・計量など効率的な運用ができます。

マルチ・コンテナミキサーの詳しい情報はこちらをご覧ください。