技術コラム工場の省エネ対策ガイド|
アイデア5選+事例3選

省エネ対策が大切、あるいは省エネ対策がコスト削減に繫がると分かっていても、なかなか実行に移せないこともあります。ここでは省エネアイディアと効果が出た実例、そして省エネの進め方を解説いたします。

省エネルギー診断
省エネルギー診断 電気設備ごとの使用電気量を把握することで効率的な省エネを実現する

工場の省エネアイデア5選

工場の省エネアイデア5選

照明のLED化・人感センサの導入

工場で未だに白熱灯や水銀灯を使用している場合LEDに変えるだけで省エネ効果があります。しかも、工場は一定の広さがあり前面をLEDに変えると、その効果はより大きなものになります。

常に人がいる訳ではないのに、常時照明が点いている場所はないでしょうか?必要な作業が発生した場合のみ使われるエリアには人感センサが有効です。人がいることを検知すると電源がONになり、人がいなくなれば再び自動でOFFになります。 電源ON/OFFという無駄な作業を増やすことなく省エネ化を進められるのは大きなメリットでしょう。

空圧回路のエア漏れ改善

チューブの劣化や継手の緩み、あるいはエアシリンダのパッキンの劣化などによりエア漏れが発生することがあります。エア漏れが発生すると、コンプレッサはより多い流量の空気を送ることになり無駄が発生します。

大きなエア漏れであれば「シュー」という音が聞こえることもありますが、小さなエア漏れは疑わしい場所に石鹸水を塗って泡の出方を確認するなど地道な作業が必要となります。

そのような時エアリークビューアーを使用することで、エア漏れ量を測定できるのです。漏れている場所が分かれば部品交換などの対応を行うことでエア漏れ改善ができます。

装置非稼働時の電源OFF

加工機械や生産設備の中には、昼休みや生産の都合で非稼働となっている時にも電源が入っている場合があるでしょう。省エネを進めるにあたって必要のない電源を落とすことは基本です。

ただ、今まで電源を落とさなかった理由もあるはず。その中には立ち上げ時に時間がかかるような理由もあるでしょう。その場合にはタイマーによって設備の電源をONにできるよう設備改善をすると良いでしょう。

太陽光発電・蓄電池の導入

電力使用量を削減することも省エネですが、自然由来の発電をすることも省エネにつながります。太陽光パネルは電力会社以外の一般事業者が行える発電方法として一般的になりました。

太陽光発電だけですべての電力を賄える訳ではありませんが、一定程度補えるでしょう。また、蓄電池を併用することで非常用電源としても活用できます。そのため、何らかの理由により電力会社からの送電がストップしたときも、一定時間なら工場の操業を継続できるでしょう。
ただし、太陽光パネルは外気温が高すぎる場合や経年劣化した場合にシステム効率が下がることがあります。設置したままにせず、日照量と発電量を監視し続ける必要があるのです。

消費電力の見える化(リアルタイム)

消費電力を常時測定してモニタで見える化することにより、誰が見ても無駄な電力が分かるようになります。そして、電力使用量を削減すると実際にコスト(電気代)削減につながり、効果が定量的に分かることで、省エネ化のモチベーションになるでしょう。
省エネだけではありませんが、一度成功事例ができるとプラスのループになることがあります。無駄を見つける→改善する→結果が出る→他の無駄も見つけたくなる(より改善したくなる)という現象が工場全体で起きれば、従業員も積極的に省エネに取り組めるでしょう。

工場の省エネ事例3選

工場の省エネ事例3選

入浴剤の製作工場

1つ目に紹介するのは入浴剤の製作工場です。この工場ではデマンドコントロールのアラームが上がりそうになると、従業員が工場中を歩き回って優先度の低い設備の電源をOFFにする作業が日課になるほど、消費電力量が逼迫していました。

そこで前月の消費電力量の実績値や、今月の目標値を掲示することで従業員の省エネ意識を高めました。空調の設定温度の調整、使用していない装置の電源OFFなど各々ができる取り組みを続けた結果、55,880kWh/年の電力量削減、約111万円/年のコスト削減に成功しました。

建築資材のプレカット工場

2つ目に紹介するのは建築資材のプレカット工場です。この工場では消費電力量が上がり続け、昨今の電気代高騰の影響もあり非常にコストに悩まされていました。そこで二つの取り組みを行うことにより、約41,000kWh/年の電力量削減に成功しました。その結果、約82万円/年のコスト削減となったのです。

  • 集塵機のインバーター設定変更
    集塵機のインバーターの設定が設置当初のままでした。そこで圧力や周波数を変えることで、必要な風量を確保しながらも、32,200kWh/年の電力量削減、及び63.9万円/年のコスト削減に成功しました。
  • コンプレッサ台数削減
    工場で使用していたコンプレッサは四台。流量を確認して三台稼働でも問題ないことを確認したうえで、コンプレッサを一台削減しました。それにより、8,800kWh/年の電力量削減、及び17.5万円/年のコスト削減に成功しました。

システムキッチンの製作工場

3つ目に紹介するのはあるシステムキッチンの組立工場の事例です。この工場では以前から省エネ対策を進めていましたが、有効な進め方が分からず効果もそれほど出ていませんでした。しかし、消費電力が契約電力の限界値に近く、消費電力を下げないと新しい設備の導入ができない状況でした。そこで五つの取り組みを行うことにより、約165,000kWh/年の電力量削減に成功しました。その結果、約329万円/年のコスト削減となったのです。

  • 空調設備の設定温度変更
    暑い時期の設定温度を24℃から26℃に変更することで、500kWh/年の電力量削減、及び1万円/年のコスト削減に成功しました。
  • 工場照明のLED化
    工場照明をLEDに変更することで、142,806kWh/年の電力量削減、及び286万円/年のコスト削減に成功しました。
  • 集塵機のインバーター化
    集塵機のファンモーターにインバーターを付けることで適正な回転を実現し、15,200kWh/年の電力量削減、及び30.4万円/年のコスト削減に成功しました。
  • 空圧回路からのエア漏れ対策
    エアリークビューアーにより空圧回路からのエア漏れを計測しました。部品交換により漏れを改善することで、5,000kWh/年の電力量削減、及び8.2万円/年のコスト削減に成功しました。
  • 加工機械の電源OFF
    資材カットの機械を昼休みのみ電源OFFにすることで、1,480kWh/年の電力量削減、及び3万円/年のコスト削減に成功しました。

工場の省エネを進めるための4STEP

山善は、照明、空調、生産設備など、工場のあらゆる設備の省エネを支援するエネルギー削減ソリューションを提供しています。 工場の電気代を削減するためには、以下の4つのステップで支援を行っております。興味を持っていただけた方はぜひお気軽に山善にご相談ください。

STEP1. 電力見える化

電力見える化とは、工場の電気使用量を把握することです。電力の見える化を行うことで、無駄な電気の使用を特定し、どのように節約していけばよいか施策を立てることができます。
電力見える化システムは電気使用量を計測するだけでなく、視覚的に分かりやすいグラフや数値にして従業員に見せることができます。
電気を使うさまざまな設備の分電盤に専用の装置を付けてデータを収集、解析し、イントラネット経由で工場内のさまざまな箇所で表示します。
電気代削減の最初のステップとして、どこにどのくらいの電気が使われているかを従業員が共通理解をすることが大切です。

工場の電力見える化システム
「工場の電力見える化システム」を活用して電気代削減 脱炭素社会への第一ステップは、現状のエネルギー使用量を知ることから!

STEP2. 省エネ診断

電気代の見える化を行ったら、次に無駄な電気の使用を減らします。これらの無駄な電気の使用を削減することで、電気代を大幅に削減することができます。
使用状況を把握して、どの設備の電気代を減らすことができるか確認し、対策をします。

省エネルギー診断
省エネルギー診断 電気設備ごとの使用電気量を把握することで効率的な省エネを実現する

STEP3. 省エネ設備を導入する

無駄な電気の使用を削減しても、工場の電気代を完全になくすことはできません。しかし、省エネ設備を導入することで、さらに電気代を減らすことができます。
省エネ設備には、以下のようなものがあります。

  • LED照明
    工場で使っている照明を白熱灯からLEDに変更すると大きな節電効果が得られます。
  • 空調
    古い空調は、最新の空調に比べると効率が悪く電気代がかかります。空調の電気代が高い場合は、置き換えることも一つの手です。 また、空調の温度を調節することで節電となります。夏の設定温度を上げる、冬の設定温度を下げるなどで工夫します。
  • 太陽光発電システム、蓄電池
    太陽光発電を導入し、工場の電気を発電します。すべてを太陽光でまかなうことはできませんが、電気代は下げることができます。また、蓄電池を併用することでさらに節電効果が増します。蓄電池は非常時の電源としても有効です。

STEP4. 再生エネルギーの活用

太陽光発電のように再生エネルギーを活用します。工場の屋上や屋根に太陽光発電システムを設置し、発電した電力は自家消費として各施設に供給します。