シングルピッキングやトータルピッキングはそれぞれにメリットがある一方で、デメリットもあります。双方のメリットを組み合わせたのがマルチピッキングですが、マルチピッキングにもデメリットがあり、それを解消するために自動化システムがあるのです。
ここでは、ピッキング手法の一つであるマルチピッキングの特徴を、ほかのピッキング手法と比較しながら紹介します。あわせて、マルチピッキングのデメリットを解消する自動化システムについても解説します。
マルチピッキングとは

マルチピッキングとは、複数のオーダーの仕分け用カゴ(以下、オリコン)とともに作業者が倉庫内を歩き、商品をピッキングしたそばからオリコンに入れる、つまり仕分けするピッキング手法です。
マルチピッキングでは、商品が置かれている商品棚の位置や集荷のタイミングを考慮して、うまくピッキングするオーダーを組み合わせる必要があります。また、梱包形態も考慮する必要があり、これらがマルチピッキングの効率の良し悪しを決める要因になります。
類似するピッキング手法との比較
マルチピッキングを含む三種類のピッキングについて、以下の表にまとめています。各々の特徴やメリット・デメリットを比較してみてください。
三種類のピッキング手法の比較
マルチピッキング | トータルピッキング | シングルピッキング | |
---|---|---|---|
特徴 | ・複数のオーダーをまとめてピッキング ・ピッキングしたその場でオーダーごとに仕分け |
・複数のオーダーをまとめてピッキング ・一括でピッキングした後に、仕分けの工程が必要 |
・1オーダーごとにピッキング ・オーダーの数だけ倉庫内を往復 |
メリット | 倉庫内の歩行距離が短くなり効率的になる | 倉庫内の歩行距離が短くなり効率的になる | 作業が単純でミスが起きづらい |
デメリット | 仕分け時にミスが発生する可能性がある | ピッキングの後に仕分けするため、効率が悪い | オーダーの数だけ倉庫内を歩行するため、効率が悪い |
向いている商品 | 卸業者や小売店向けなどオーダー数が多くSKUが少ない場合 | 卸業者や小売店向けなどオーダー数が多くSKUが少ない場合 | 一般消費者向けECなどオーダー数が少なくSKUが多い場合 |
SKUとは「Stock Keeping Unit」のことをいい、在庫を管理するうえで最小の単位のことです。たとえば、商品Aが5個のオーダーではSKUが1、商品Aが3個と商品Bが2個のオーダーではSKUが2となります。つまりSKUとは商品の種類の数であり、実際に発送する数量とは異なります。
三種類のピッキング手法には、それぞれ特徴があります。たとえば、マルチピッキングとトータルピッキングを比較すると、ピッキングそのものだけならトータルピッキングの方が効率がよいかもしれません。しかし、トータルピッキングはピッキング後に仕分けする必要があるため、オーダー数やSKUによってはマルチピッキングの方が効率よくピッキングできます。
トータルピッキングの詳細はこちら
マルチピッキングとシングルピッキングの最大の違いは、倉庫内の歩行距離です。シングルピッキングの方がシンプルでミスが起こりにくい反面、マルチピッキングに比べて明らかに歩行距離が長くなり、ピッキング作業にかかる時間が長くなります。
シングルピッキングの詳細はこちら
マルチピッキングの自動化に役立つ最新システムの紹介

マルチピッキングをさらに効率よく行うための自動化システムを紹介します。
ピッキングカート
マルチピッキングを行うときに使用する、ピッキングするオーダーと同数のオリコンを積んだカートのことをピッキングカートといいます。ピッキングカートには紙の伝票代わりのタッチスクリーンが取り付けられていたり、ピッキングに使用するバーコードスキャナーやRFIDタグが取り付けられていたりと、マルチピッキングに必要なデバイスが一通りセットになっています。
音声によりピッキングする商品の数を指示したり、ピッキングした商品を投入するオリコンを光によって指示したりするタイプもあります。これらはマルチピッキングの懸念点であるピッキングミスを軽減するためのものです。
AMR(詳細後述)と同様に倉庫内を自律走行するピッキングカートもあります。この場合、あらかじめ区分けされたエリアに作業員を配置しておき、ピッキングカートが商品棚の前まで来たら、作業員が商品棚から指定のオリコンに入れるという作業フローになります。また、システム上でピッキングカートの位置を把握できたり使用状況をモニタリングできたりと、IoTの技術を利用してピッキング作業を管理することも可能です。
ボイスピッキングシステム
通常、紙の伝票やディスプレイに表示された指示に従ってピッキングや仕分けをします。しかし、これらの方法では紙を持つ必要があったり、紙やディスプレイに視線を移したりする必要があります。そういった問題を解決できるのが、ボイスピッキングです。
ボイスピッキングでは、ピッキングする商品が置いてある商品棚、ピッキングする商品やその数、そしてピッキングした商品を入れるオリコンを音声で指示してくれます。そのため、作業者は両手を作業に使えるだけでなく、視線を移すことなく作業に集中できるのです。
しかし、音声による指示は一度聞き逃すとわからなくなったり、商品棚や商品コードなど一度に多くの指示を聞いても覚えられなかったりする場合があります。そのため、はじめに商品棚の位置を指示して作業者が商品棚に到着したら商品名を指示するなど、作業者の立場になったシステム設計になっているタイプもあります。
また、マルチピッキングは仕分け時にミスが起こりやすいものです。そのため、作業者がオリコンに商品を入れるとき、作業者が読み上げた商品コードをシステム側で正誤判断するタイプや、作業者が商品を入れたオリコンを正誤判断するタイプもあります。さらに、入れた商品を計量してシステム側で数量確認するタイプもあるのです。
自動誘導車(AGV)および自律移動ロボット(AMR)
AGV(Automated Guided Vehicle)とAMR(Autonomous Mobile Robot)は、いずれも商品を自動で搬送してくれるロボットです。最大の違いは走行方法にあり、AGVの場合は、倉庫側に磁気テープや二次元コードなどの車両誘導対策を行う必要があります。一方、AMRならSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)というレーザー技術により、自己位置と周辺地図を把握するため自律走行が可能です。
ウェアラブルテクノロジー
ウェアラブルテクノロジーとは、バーコードスキャナーやRFIDリーダー、あるいはハンディーターミナルを腕や手首に装着できるようにしたもので、ハンズフリーで作業できるのが特徴です。そのため、音声ピッキングとの相性がよく、特に重量物や長尺物のピッキングを効率よく行えます。
WMS
WMS(Warehouse Management System)は倉庫管理システムのことであり、倉庫の実在庫をシステム上で管理するものです。ピッキングカートやウェアラブルテクノロジーとデータ連携することで、実在庫とシステム在庫の差異をなくしたり、誤出荷の低減に貢献したりします。
マルチピッキング自動化のご相談は山善へ
山善では、マルチピッキングに課題を抱える企業様に向けて、自動化システムを提案しております。マルチピッキングのさらなる効率化や省力化、あるいはピッキングミス低減や誤出荷のリスク低減など、解決したい課題をまずはお気軽にご相談ください。