技術コラム物流倉庫でのピッキング作業を
自動化する方法

物流倉庫におけるピッキング作業は、商品を迅速かつ正確に選び出す必要がありますが、手作業では時間とコストがかかり、ヒューマンエラーも発生しやすくなります。そこで作業の効率化とコスト削減のため、ピッキング作業の自動化が進められています。本記事では、物流倉庫におけるピッキング作業の課題や自動化のための最新技術、導入時の注意点などを解説します。

物流倉庫におけるピッキング作業とは

ピッキング作業とは 、顧客からの注文に基づいて商品を物流倉庫から選び出し、発送のためにまとめる作業のことです。
一般的なピッキングの作業内容は、まず顧客からの注文書に記載された商品名や商品コード、数量などの商品情報を確認します。この情報に基づいて商品を倉庫内から探し出し、正確に注文通りの商品や商品数が選ばれているか検品します。このとき、商品の外観等の状態に問題があれば除外しなければなりません。検品で問題がなければ商品を梱包し、その後は顧客のもとへ商品を発送します。
ピッキングする商品の単位はさまざまで、単品ごとにピッキングするピースピッキングや、ケース単位でピッキングするケースピッキング、パレット単位でピッキングするパレットピッキングなどがあります。どのピッキング方式においても迅速かつ正確な作業が求められ、物流におけるコストや顧客満足度に大きく影響します。

物流倉庫におけるピッキング作業とは 物流倉庫におけるピッキング作業とは

物流倉庫でのピッキング作業における課題と自動化のメリット

物流倉庫でのピッキング作業における課題

ピッキング作業 は多くの人手を要する作業であり、作業者の人件費がかかります。また、作業にはスピードと正確さを求められるため、商品や数量の間違いなどヒューマンエラーが生じるリスクがあります。
さらに従業員の安全管理も重要な課題です。ピッキング作業時には重量物の取り扱いや高所に配置された商品の取り扱いなどの作業もあり、労働災害が発生するリスクが常にあります。適切な安全対策を導入することは必須ですが、作業効率の低下や対策に要するコストなどの問題があります。
また、近年は個人消費者向けなどの少量の配送が増えており、ピースピッキングを行う機会が増えています。 しかしバラの状態の商品は形状や重さなどが異なるため、作業の自動化が困難で人の手に大きく頼っています。ピッキング作業をいかに効率化できるかは常に追求される課題であり、作業の遅延は配送スケジュール全体の遅延を引き起こし、物流コストにも影響します。

ピッキング作業を自動化するメリット

ピッキング作業の自動化は、作業の正確さや安全性、スピードの向上につながる解決策になり得ます。
機械による自動化システムは、あらかじめ決められたルールに従ってピッキングを行うため、ヒューマンエラーの可能性を減らせます。それにより返品や再出荷などの追加コストも抑えられます。
また高所にある商品のピッキングや、重量物のピッキングおよび工場内の搬送をロボットが行うことで、作業者に危険が及ぶリスクの軽減が可能です。自動化を実現できれば作業者の勤務時間に関係なく24時間連続で稼働することも可能で、突発的な需要の増加にも対応しやすくなります。
自動化によって単に作業スピードが向上できるだけでなく、より効率的な作業方法を発見することも期待できるでしょう。作業を効率化できればそれだけ顧客に早く商品を届けられ、物流コストの低減だけでなく、顧客満足度の向上にもつながります。

ピッキング作業を自動化するための最新技術を紹介

物流倉庫におけるピッキング作業を自動化するための最新技術をいくつかご紹介します。

ロボットピッキングシステム

商品のピッキング作業をロボットで自動化することにより、作業を効率化できます。事前に商品のサイズや形状、重量などのデータを学習し、実際のピッキング時はカメラで商品の把持位置や配置を認識しながら作業を行います。
対象となる商品のデータをAIのトレーニングに使用することで、物体の特徴を考慮したピッキングが可能です。個々の商品ごとに適切な動きをロボットに指示できるため、バラの商品を扱うピースピッキングにおいても効率化が見込めます。
ピッキングした商品を箱などに充填する際も、商品の情報から適切な箱のサイズを選択したり、詰め込む配置を最適化したりなど、より効率的に作業を進められるようになります。

ロボットピッキングシステム

AGV(無人搬送車)

ピッキングした商品を梱包場所まで運んだり、梱包した商品を配送場所まで運んだりする際に、AGV(無人搬送車) を活用することで人の負担を軽減できます。AGVは物流倉庫内の搬送を自動化するもので、AGVに物を載せると人の手を借りずに指定した位置まで搬送します。
AGVを使用する場合は、倉庫内に磁気テープなどを用いてあらかじめ配送ルートを設定しておく必要があります。一方で、次世代AGVとも呼ばれるAMR(自立走行搬送ロボット)は機体に搭載したセンサーで周囲の状況を把握し、自律的にルートを設定して移動できます。
AGVの導入で、広い倉庫内に配置する作業者の人数や移動時間の削減が可能です。近年では物流倉庫だけでなく、飲食店やホテルなどにも活躍の場を広げています。

ロボットピッキングシステム

WMS(倉庫管理システム)

WMS(倉庫管理システム)は 、倉庫内の物流を管理および最適化するためのシステムです。商品の受け入れ、在庫管理、ピッキング、梱包、出荷など、倉庫内の一連の作業を効率化するための管理手法を提供します。
各作業者は、バーコードスキャナ付きの携帯端末を通じて指示を受け取ります。この端末はピッキング情報の伝達にも使用され、作業者にオーダー件数、ピッキングエリア、アイテム数などの情報を提供します。ピッキングの際は商品の棚とバーコードを読み取って在庫管理を行い、作業が終了すると出荷明細書の出力も行います。
WMSを導入することで、倉庫の在庫状態をリアルタイムに確認できるようになります。また携帯端末に表示された商品の画像を見ながら作業でき、バーコードやRFIDタグの読み取りに対応しているため、ピッキング時のヒューマンエラーの防止につながります。

WMS(倉庫管理システム)

最新技術を導入する際の手順と注意点

物流倉庫に最新技術を導入する際は、まずピッキング作業における業務フローと要求仕様を明確にすることが必要です。その上で導入したい技術が、要求仕様を満たすかどうかを慎重に評価します。
具体例を挙げると、ロボットピッキングシステムの場合は、システムが商品の種類や数量に対応できるか、商品を傷つけずに期待する作業スピードを実現できるかなどを確認します。AGVを導入する際は、既存の倉庫のレイアウトや作業フローに影響を与えずにAGVの経路を確保できるか確認します。もし課題があれば、先に倉庫のレイアウト変更を考える必要も出てくるでしょう。WMSの導入については、システムの内容が自社の作業フローに合っているか、携帯端末などシステムの使い勝手は問題ないかを確認します。
また、新たなシステムを導入して実際に自社で運用してみると、最初は気づかなかった課題が次第に見えてくるものです。最初はスモールスタートで少しずつ導入しながら結果を評価し、効果が確認出来たら次第に導入数や投資金額を増やしていくとよいでしょう。