技術コラムロボットハンドの選び方|
種類ごとに適した製品・メーカーを紹介

世界ではさまざまな産業の需要が伸びており、その一つであるロボット市場は2035年には市場規模が約35兆円に達するといわれています 。しかし、ロボットはアームだけでは使用できず、必ず作業に合わせたアタッチメントが必要です。ピックアンドプレースなど物を把持して移動させる作業では、必ずロボットハンドを使用しなければなりません。

本記事では、方式の異なるさまざまなロボットハンドについて解説します。

ロボットハンドとは

ロボットハンドとは、人間における手や指の役割を果たすもので、ピックアンドプレースのような作業に用いるロボットに必ず取り付けられています。「人間の手のようなもの」と聞くと指でつかむことをイメージするかもしれませんが、ロボットハンドではそれに加えて吸着タイプやマグネットタイプのものもあるのが特徴です。人間とは異なり真空や電磁力を使えるため、それらを活用したロボットハンドがあります。別の言い方でロボットアーム・エンドエフェクタ・グリッパーともいいます。

人で例えると手の部分になりますので、自動化進める上でどのようなロボットハンドにするか重要になってきます。ロボットハンドの爪の部分を3Dプリンターで制作しトライアルを行う事も可能です。

ロボットハンドとは

ロボットハンドの種類と選び方

把持(チャック)型

把持(チャック)型のロボットハンドの特徴

把持型は最も人間の手に近い形のロボットハンドです。人間の指と同じ役割を果たす2本の爪が開閉(パラレルタイプ)、あるいは旋回(スイングタイプ=扇形に開閉)することで物をつかむことができます。爪の形も汎用的な形状(四角柱)から把持するワークに合わせた形状までさまざまで、用途に合わせて選択可能です。円柱などワークの形状によっては2本の爪では把持しづらい場合は、旋盤のチャックのように爪を3本備えたロボットハンドを利用することで、十分な把持力を発揮できます。

爪の開閉機構を動かす動力は、大きく分けて電動タイプ(電動グリッパ)と空圧タイプ(エアチャック)があります。前者はサーボモータとギアにより爪を開閉し、後者は圧縮空気により爪を開閉します。電動タイプはサーボモータで動くため、把持位置(把持状態の爪の位置)を任意に設定可能です。一方、空圧タイプはエアシリンダーと同じ構造のため、把持位置は任意に設定できません(ワークをつかんだ位置で爪が止まります)。

空圧タイプは方式によって動作方法が異なります。開閉両方向に圧縮空気を送るのが複動式、いずれか片方の動作のみ圧縮空気を送るのが単動式です。単動式は開閉のいずれかにスプリングの力が常にかかっており、圧縮空気を送らない状態で爪が開いているタイプを「常時開」、その反対を「常時閉」といいます。

把持(チャック)型のロボットハンドの主な用途

把持型の特徴は爪によってワークを確実に把持できることです。そのため、比較的重いワークのピックアンドプレースに向いています。また、把持型は一定の形をしたワークに用いられることが多く、爪の開閉によってつかむ位置が一定となるため、ワークの組み付け(組み立て)など、高い位置決め精度が要求される場合にも適用できます。

特に電動タイプは開閉速度や把持力の制御が容易なため、比較的柔らかいワークや割れやすいワークをつかむことも可能です。

把持(チャック)型のロボットハンドの製品(メーカー)紹介

株式会社北川鉄工所
株式会社北川鉄工所

北川鉄工所の把持型ハンドは、搬送と同時に±2μmの高精度測定が可能。工程を統合し、タクト短縮やコスト削減に寄与します。設備スペースを有効活用でき、省人化と品質管理を同時に実現する次世代ソリューションです。

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株式会社コガネイ
株式会社コガネイ

コガネイのフラット型電動ハンドは世界最薄クラスで、モーメントを抑えながら重いワークを安定把持。設置スペースを節約し、高速動作にも対応します。セル生産など多様なラインで柔軟に導入可能です。

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吸着型

吸着型のロボットハンドの特徴

吸着型は、その名の通り負圧(真空)によってワークに吸い付くロボットハンドです。先端部(ワークに吸い付く部分)には吸着パッドがついており、一定程度ワークの表面形状に対応できるようになっています。負圧を作り出すためには真空ポンプや真空エジェクタが必要です。これらと吸着パッドを組み合わせるだけでも吸着型のロボットハンドになりますが、エア配管が必要で、装置が大掛かりとなってしまいます。

一方、真空ポンプ内蔵式の吸着型ロボットハンドなら、真空ポンプが吸着型ロボットハンドの筐体の中に入っているため、小型であるだけでなくエア配管が不要です。ロボットハンドの周りがすっきりするだけでなく、脱着が容易になります。

吸着パッドはワークと接触したときに隙間ができないようにするため、直径が小さくなっています。そのため、大きいワークを吸着する際は複数の吸着パッドを使用し、必要な吸着力を確保しつつ、より広い範囲をバランスよく吸着する必要があります。

ワークを所定の位置まで搬送した後、ワークを置きます(=リリース)。しかし、吸着パッドとワークは密着しているため、真空ポンプを止めるだけではリリースできません。そのため、吸着時とは反対にエアを流すことにより、強制的にワークをリリースする必要があります。これを吸着破壊といいます。

吸着型のロボットハンドの主な用途

吸着型ロボットハンドは一般的に、把持型より把持力が低い傾向にあります。そのため、重量のあるワークの搬送にはあまり向きません。しかし、軽くて薄く面積が大きいワークなど把持型にとっては不得意でも、吸着型が得意な形状もあります。このような形状のワークは面で支える必要があり、複数の吸着パッドにより広い面で吸着することでワークを変形させずに搬送できます。

ただし、重量が吸着力以下なら、それほど形状を気にすることなく幅広いワークに使用可能です。

吸着型のロボットハンドの製品(メーカー)紹介

コンバム株式会社
コンバム株式会社

内蔵真空ポンプでコンプレッサ不要の吸着型ロボットハンドです。低騒音で作業環境を快適化し、多品種・不定形状ワークも安定して吸着可能。試作ラインなど頻繁に製品が変わる現場で導入しやすく、即効性のある効率アップを実現します。

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株式会社コガネイ
株式会社コガネイ

エア源や配管が不要の真空吸着型ハンドで、設置もメンテナンスも簡単。ロボットや搬送ワークに合わせたアダプタが選べ、レイアウト変更にも柔軟に対応します。省スペース化と省エネを両立し、多品種生産にも幅広く対応可能です。

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日東工器株式会社
日東工器株式会社

電動吸着型ロボットハンドで、コンプレッサ不要の省エネ設計が特長です。高い真空保持力と低騒音により、使用場所を選ばずに運用できます。メンテナンス負担を軽減し、長期稼働を支えながら効率的な搬送を実現します。

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マグネット型

マグネット型のロボットハンドの特徴

マグネット型ロボットハンドには永磁マグネット、電磁マグネット、永電磁マグネットの3種類があります。

永磁マグネットとは永久磁石を用いたマグネット型ロボットハンドで、電源を必要としないシンプルな構成が特徴です。しかし、ON/OFFができないため、吸着時は磁力がはたらくまでロボットハンドをワークに近づけ、リリース時には外力(例えば人力など)によってワークを取り外す必要があります。マグネットをスライドさせてワークから離すなど、ロボットハンド側にリリース機構が備わっている場合もあります。

電磁マグネットは電流を流している間のみ磁力が発生するため、ON/OFFが可能です。しかし、吸着するには常時電流を流し続ける必要があり、永磁マグネットに比べて低いエネルギー効率がデメリットです。また、電流により熱が発生しやすいこともデメリットになります。

永電磁マグネットはネオジム磁石とアルニコ磁石を組み合わせてワークを吸着するロボットハンドです。両磁石は永久磁石ですが、アルニコ磁石は電流を印加すると極性(磁場の方向)が反転するのが特徴です。そのため、吸着前はネオジム磁石とアルニコ磁石の極性が打ち消し合う状態ですが、吸着時にはアルニコ磁石の極性を反転させて強力な磁力を発生させます。リリース時には再度極性を反転させることで磁力を弱めて(打ち消し合い)ワークをリリースします。極性を反転させる際にパルス電流を印加する必要がありますが、印加するのは一瞬のため電磁石よりエネルギー効率が高いのが特徴です。また、電流は極性反転のみに必要で磁力保持には関係ないため、停電時にもワークが落下しません。

マグネット型のロボットハンドの主な用途

磁力を利用するため、鉄やコバルト、ニッケルなどの磁性をもつ金属を吸着できます。同じ金属でもステンレスや銅など磁性を持たない金属は吸着できません。把持型では把持できないような複雑な形状のワークや、吸着型では吸着力が足りない重いワークの搬送に向いています。

マグネット型のロボットハンドの製品(メーカー)紹介

シュンクジャパン株式会社
シュンクジャパン株式会社

シュンクのマグネット型ロボットハンドは、最大14kg・厚さ15mmの金属ワークに対応し、磁力で上部から掴む省スペース設計が特長です。狭いラインでも扱いやすく、吸着・脱着が迅速。自動車部品や家電などで効率的な搬送を実現します。

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工場で扱うワークの形状や硬度、材質はさまざまなため、ワークに適したロボットハンドの選定が必要です。本記事では3種類のロボットハンドを紹介しましたが、それぞれのタイプの中でも細かい分類があるため、搬送に求められる条件や仕様をよく確認し、最も効果のあるロボットハンドを選定するようにしましょう。

山善のロボットテストラボでは、さまざまなロボットハンドを用いたワークテストが可能です。実際に目で見て確かめたい方はぜひご活用ください。

ワークテスト

※ワークテストは有償となります。
※ラボで使用できる協働ロボットはテックマンロボットのみとなります。